そういえば、今年の春、気になる線香を買っていました。
川越から車で1時間ちょっとの東秩父村へ、ドライブした時に道の駅で出会った線香です。
『秩父 古代蓮香 古代蓮入』

ただの「古代蓮香」の商品名であれば買っていませんでした。
私が買いたいと思ったのは、古代蓮香の横に小さく書かれた「古代蓮入」が気になったから。
古代蓮が入ると、どんな香りになるんだ??
まず線香を作る大前提をお話しします。
線香は草や木を乾燥させて粉末にした香料に
椨粉(たぶこ)というタブノキの粉を入れて作ります。
この椨粉がノリ剤となり、形作られるワケです。
私たち香司は、基本的に
日本で昔から使われてきた香料をベースに使います。
とはいえ、燃える素材のものをノリ剤で固めてしまえば
香料と言われるものでなくても、何でも線香にはなるんです。燃えるから。
ではでは蓮は香料なのか?
蓮という花自体は、それこそ平安時代からお香のテーマとして扱われてきた植物です。
蓮の花に似せて作られたお香は「荷葉(かよう)」と言います。
ポイントは「荷葉」には蓮の花や葉は入っていないことです。
あくまで香りの「テーマ」が蓮なので、「蓮のような香り」ということです。
つまり蓮そのものは、昔から使われている香料ではない。
けれども蓮の花も蓮の葉も、乾かして粉末にすれば燃えるでしょうね。
線香の材料として。
しかし蓮の花を使い、蓮の線香を作ったとしても、蓮の花の香りがするかは別問題。
これは蓮以外の花にも言えること。
桜の花を入れて、桜の香りの線香ができるか?
金木犀の花を入れて、金木犀の香りの線香ができるか?
バラの花を入れて、バラの花の香りの線香ができるか?
それはもう『作ってみなければ わからない』。
私は作ったことがないので、どんな香りがするのか知りません。
ここできっと、皆さまから「だってバラの香りの線香、売っているじゃないか」という声が聞こえてきそうです。
そうですね、バラの香りの線香も桜の香りの線香も売っていますね。
けれどその香りは、天然の香りかどうかは疑問です。
線香は天然香料以外に、合成香料を使って作ることもできるからです。
花系の香りの線香を作る場合には、合成香料を使って作る方が香りはハッキリと出ます。
そしてその線香を薫いた人がイメージする、咲いている花の香りを線香で表現することができます。
むしろ花系の香りで天然の香りはあるのだろうか?という感じ。
ところが線香は食品のように、裏面を見ても、
細かく何から作られているのか表記されていないことがほとんどです。
いくつか書いてあれば親切。
「香料」とだけ書いてある場合も。この場合は天然香料なのか合成香料なのかはわからない。
何にも表記がないことも珍しくありません。
ここまでが線香の大前提。果たしてこの古代蓮香の香りは?
そもそも商品名の「秩父 古代蓮香」に、秩父って古代蓮が有名だったんだと知る。
古代蓮といえば埼玉県では行田が有名なので。
裏を見る。

何も書いていない。まあ、そうだろうね。
フタを開ける。

おやおや説明がある。

真ん中あたりに『その蓮の華、実、茎を原材料として作られたのがこの線香です』と書いてあります。
つまり線香の香りを、蓮の花の香りを目指して作ったわけではなく、
蓮を材料として作ったというところに意味があるわけですね。
ちなみに箱を開けた段階で、香水調の爽やかな香りがしています。

着火。

箱を開けたときに香った香りとあまり変わらない香りが漂います。
蓮の香りに寄せてる香りではあります。が生の蓮の香りよりは、かなり強い香り。
1本玄関で薫くと、我が家くらいの狭い家ならば、1階にも2階にも香りが届きます。
とは言っても、これはおそらく合成香料の香り。
材料として使っている蓮の華、実、茎の香りがしているかどうかは、私の鼻ではわからない。
線香としては、香りがしっかりしているし、いいと思いますよ。
私個人の感想としては…
私は「いかにも線香」な香りで「お寺っぽい」香りの線香が好きなので、
まったりタイムに薫くことはしないかな。
逆に香りが強いので、芳香剤の感覚で使います。
しっかりと家に香りを残したい時に。
でもきっとこの線香は、いい香りはさせたかったのだとは思うけれど、
それよりも蓮を材料として作るということに意義を持たせたはず。
薫いたときに上に登っていく蓮の粒子を浴びることで、
仏教では大切にされている蓮が仏様との縁を結んでくれることを願って作ったんでしょうね。
だからこの線香はこれで正解。
いつか我が家で咲いている蓮でも線香を作って、どんな香りがするか実験してみようかな。
一年に一輪しか咲かないから、レア線香になること確実だけど。